この恋を、忘れるしかなかった。
ぽーっと霧島くんを見ていたわたしは、2人の声にハッとして、霧島くんから視線をそらした。

「美雪傘持ってないから、急いで帰らなきゃ」
「あたしもー!早く帰ろ、美雪」
ーー次第に暗くなっていく空。
「じゃあ駅前のコンビニ寄ろうぜ。菓子のついでに傘買えば?名案じゃね?」
「勝手に寄れば?おごらないし」
「まだやってんのかよお前ら。付き合えよ、マジで」
ーーそれとは逆に、明るい雰囲気の教室。
恵ちゃんと藤井くんのやりとりに、甲斐くんが少しあきれ気味だった。

「オレ、後で帰るわ。ちょっと忘れ物思い出した」
「わかった。じゃあな響。リカちゃん先生もバイバーイ!よし恵都、コンビニ行くぞ」
「藤井くんまだ言ってんの⁈」
「あはは、みんな気をつけてね」
わたしは手を振って、みんなを見送った。

静かになった教室に、わたしの心臓の音が響いてしまいそうで……どうか霧島くんに聞こえませんようにと、そっと祈った。
前にも似たような事が、あったような…。

「き、霧島くんも、早めに帰った方が……」

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