GENERATIONS LOVE
『…神…山…?』


俺の問い掛けに、俺の顔を一瞥して
相手の男に向き直る。
体勢を立て直した男が、
先程よりも怒り狂った様子で神山に殴りかかろうとしていた。


『関係ない奴が…
しゃしゃり出てくんじゃねぇっ‼』


先程と同様に、片手で相手の拳を掴み、
反対の手でその腕を後ろに捻る。


『いっ!?痛ぇっ、離せっ離しやがれっ‼』


『暴力で片付けるなって言ったのに、
きかないからだろ』


力を入れてるようには見えないが、男の顔から冷や汗が流れる。


『人が通る道で暴力見たら、
関係なくても止めるだろ?
相手が知ってる奴なら、尚更ね』


そう言って神山は俺に視線を向ける。


『外野の俺から見て、
二股掛けてたあんたの彼女が、
一番問題じゃないの?』


その視線を…
ただ、その場で固まってる彼女に移す。


『…ぁ…ち、違うのっ‼
私、何度も別れたいって言ってたのに、
きいてくれなくて…私が好きなのは…
一樹だけっ…一樹だけなのっ‼ 』


『美樹っ、お前っ‼
別れ話なんかしてねぇだろうがっ』


神山に押さえ付けられたまま男が怒鳴る。
男の言葉を無視して、彼女が俺にすがりつく。


『…一樹…信じてくれるよね?』


そして俺はこれ以上ない程の笑顔を張り付ける。
俺の笑顔に安堵した彼女は俺の背中に腕を回そうとする─
その腕をやんわり押し返す。


『悪いけど…彼氏居る子に興味ない』


二股掛けられて騙されたとか、
そう煮えくり返る程の気持ちを
この子に持ってた訳じゃない。
ボロボロ泣かれようが、
それが俺の本心。


『神山…その人離してやって』


俺の言葉に無言で頷き、手を離す。
俺は男の前に立ち、


『彼氏居るのは本当に知らなかったんだ。
でも、嫌な思いさせた。ごめん』


それだけ言って頭を下げる。


『神山もサンキューな…』


神山が俺を助けるために放り投げた荷物を拾い、手渡す。


『勝手にでしゃばっただけだ』


俺から荷物を受け取り、歩き出す。
泣いてる彼女と放心状態の男を置き去りにし、俺も神山の後を追う。
打った背中に激痛が走る…
相手を見極め切れなかった俺の失態が、
この痛みか…
< 22 / 77 >

この作品をシェア

pagetop