GENERATIONS LOVE
キリキリとした胸の痛みを感じて…
昨日過った考えに、捕らわれそうになる。


もし…本当にそうであったとしても──


茜ちゃんとふたりで、談笑しながら開店準備を進めている香坂さんを見つめる。


きゅっと胸の奥がしめつけられる。


この気持ちが俺の中から消せる訳じゃない。
──なかったものにはもう…出来ない。


相手を傷付けてまで、
自分の気持ちを押し通そうとは思わない。


それなら──
せめて… 想い続けるだけ…


そう思いながら、香坂さんを見つめていた俺のことを、
いつの間にか…香坂さんから視線を外した
オーナーが優しい表情で見ていたことに、俺は気付かなかった。


開店10分前──


「おはようございますっ‼遅れてすみません
でしたっ‼」


バタバタと走りながら、大声で張り上げてホールに現れる谷山。
全員が動きを止め、一斉に谷山に視線が集まる。


「うるさいっ‼そして、遅いっ‼」


持っていたメニュー表の角で、
躊躇せず、思いきり谷山の頭を殴る。


「痛っ!?痛いですよ~修二先輩っ‼」


頭を擦りながら、涙目で訴える。


「痛くしてるんだっ!
…最近、遅刻多過ぎだろ‼」


この数週間、谷山が開店ギリギリで出勤して来ることが続いていて、都度軽く注意はしていたが…流石に目に余る。


「お前さ、お金貰って働かせてもらってる
以上、責任が伴うこと…分かってる?
お前がすべきことを、お前の代わりに
フォローしている人に負担掛けているん
だぞ。甘えた考えは捨てて、
自覚と責任を持て」


淡々と、静かに叱責する俺に


「はい…すみませんでした。以後気を付けま
す」


頭を深々と下げ、謝る谷山…


「分かったなら良い。気持ち切り替えて、
今日のメニュー確認しとけ」


「はいっ!」と返事して、
顔を上げた谷山に、メニュー表を渡す。
ふと、昼間見た…谷山の表情を思い出す。


「それから、もし…困ってることや、
お前の手に負えないことがあるなら、
ひとりで抱え込むなよ」


俺の言葉に目を見開く谷山…
その反応で疑念が確信に変わる。
やっぱりな…
だとしても…今は様子をみるしかないか…
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