GENERATIONS LOVE
香坂さんを送るべく、
ふたりで並んで歩く。
香坂さんの歩幅に合わせ、ゆっくり進む。
いつか…こんなふうに並んで歩くのが、
当たり前になったらいい…
香坂さんの隣にいるのが、
他の誰でもない…俺であったらいいのに…
物思いに耽っていた俺に、香坂さんが声を掛ける。
「神山さん…お話って?」
「ああ、そうでしたね…来週からですが、
ランチの実習に入ります。
1週間ランチを経験してもらって、
問題なければ、
次の週はランダムにシフトに入り、
晴れて独り立ちです。
オーナーの了承済みです」
「そう…ですか…分かりました…
ランチということは、
誰に指導して頂けるんでしょうか?」
20㎝近くの身長差で、必然的に俺を見上げる香坂さんの目が上目遣いになるので、
その度に俺は、
ドキドキしっぱなしなる。
狙ってやってる訳じゃないから…
余計にくるものがある…
「…変わらず、俺が入ります。
再来週のシフトはランダムになるので、
昼、夕で入れない時間帯は、
予め知らせて頂けたら、俺が合わせるん
で…気兼ねなく言って下さい」
俺の言葉に、
複雑な表情を浮かべる香坂さん…
「正直…神山さんに指導して頂けるのは、
物凄く心強いのですが……
大学は…大丈夫ですか?
無理…してませんか?」
やっぱり…血は争えない。
森田さんは簡潔に『大学は?』と聞いてきた。その一言には、今…香坂さんが言った内容が含まれていた…
それが、とても微笑ましい。
香坂さんは、自分のことより…
俺を案じてくれている。
「大丈夫です。無理もしてませんし、
何より…俺がそうしたいだけなので」
「それなら…良かったです!
今後もご指導、宜しくお願いしますね」
俺の返答に安心したのか、笑顔でそう言ってくれる。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そんな話をしていたら、香坂さんが足を止める。
「私の家…ここなんです。送って下さって、
ありがとうございます…また…」
香坂さんが俺に会釈をする…
「いえ…俺が言い出したことなので…
でも、今後もこの時間のシフトに
一緒に入っているなら、香坂さんのことは
俺が送ります。俺に…送らせて下さい。
理由は、さっき言った通りです」
真っ直ぐ香坂さんに向き合い、
そう告げる。
香坂さんの返事を待たず、更に伝えたいことを、先程と同様に畳み掛ける。
「それから……
オーナーや木村みたいに、俺のことも、
名前で呼んでくれませんか?
俺も……俺も、今後は真琴さんと呼ばせて
もらいます」
自分の言いたいことを、淡々と告げた。
香坂さん……真琴さんは、驚きを隠せず、
目を見開いて、俺を見ている。
強引な位じゃないと、7歳年下の俺は…
男として意識してもらえないだろう…
「…名前で呼んでくれないと、
俺…振り向きませんし、返事しません。
さぁ、もう家に 入ってください」
今日一番の困惑した表情の真琴さん。
「え…あ、あのっ…」
何をどう返したら良いか分からない…
そんな様子の真琴さん…
そうさせているのは、俺なのだが…
「真琴さんが家に入ったのを
見届けないと、俺…安心して帰れないです
よ」
笑顔でそう言い、真琴さんの両肩に手を置き、身体を反転させ…そっと背を押す。
真琴さんに触れたのは、
これが初めて…
凄く…胸が高鳴る…
「そのまま…振り向かないで、
家に入って下さい。
お休みなさい…真琴さん」
俺に背を押され、一歩一歩進み…
ドアの前で立ち止まる。
真琴さんの後ろ姿を、ただ見つめていた俺に…
「お…送ってくれて、有り難うございまし
た! お休みなさいっ‼」
振り向いて、早口で再度お礼を言って、
家の中に入って行った。
真琴さんの顔…真っ赤だった…
「…振り向かないでって…言ったのに…」
少しは…俺を意識してくれただろうか?
俺の気持ち…少しは伝わった?
ずっと、苗字呼びの男が…
女性の名前を呼ぶのは……
好意の表れ───
真琴さん…
あなたにもっと、近付きたい……
ふたりで並んで歩く。
香坂さんの歩幅に合わせ、ゆっくり進む。
いつか…こんなふうに並んで歩くのが、
当たり前になったらいい…
香坂さんの隣にいるのが、
他の誰でもない…俺であったらいいのに…
物思いに耽っていた俺に、香坂さんが声を掛ける。
「神山さん…お話って?」
「ああ、そうでしたね…来週からですが、
ランチの実習に入ります。
1週間ランチを経験してもらって、
問題なければ、
次の週はランダムにシフトに入り、
晴れて独り立ちです。
オーナーの了承済みです」
「そう…ですか…分かりました…
ランチということは、
誰に指導して頂けるんでしょうか?」
20㎝近くの身長差で、必然的に俺を見上げる香坂さんの目が上目遣いになるので、
その度に俺は、
ドキドキしっぱなしなる。
狙ってやってる訳じゃないから…
余計にくるものがある…
「…変わらず、俺が入ります。
再来週のシフトはランダムになるので、
昼、夕で入れない時間帯は、
予め知らせて頂けたら、俺が合わせるん
で…気兼ねなく言って下さい」
俺の言葉に、
複雑な表情を浮かべる香坂さん…
「正直…神山さんに指導して頂けるのは、
物凄く心強いのですが……
大学は…大丈夫ですか?
無理…してませんか?」
やっぱり…血は争えない。
森田さんは簡潔に『大学は?』と聞いてきた。その一言には、今…香坂さんが言った内容が含まれていた…
それが、とても微笑ましい。
香坂さんは、自分のことより…
俺を案じてくれている。
「大丈夫です。無理もしてませんし、
何より…俺がそうしたいだけなので」
「それなら…良かったです!
今後もご指導、宜しくお願いしますね」
俺の返答に安心したのか、笑顔でそう言ってくれる。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そんな話をしていたら、香坂さんが足を止める。
「私の家…ここなんです。送って下さって、
ありがとうございます…また…」
香坂さんが俺に会釈をする…
「いえ…俺が言い出したことなので…
でも、今後もこの時間のシフトに
一緒に入っているなら、香坂さんのことは
俺が送ります。俺に…送らせて下さい。
理由は、さっき言った通りです」
真っ直ぐ香坂さんに向き合い、
そう告げる。
香坂さんの返事を待たず、更に伝えたいことを、先程と同様に畳み掛ける。
「それから……
オーナーや木村みたいに、俺のことも、
名前で呼んでくれませんか?
俺も……俺も、今後は真琴さんと呼ばせて
もらいます」
自分の言いたいことを、淡々と告げた。
香坂さん……真琴さんは、驚きを隠せず、
目を見開いて、俺を見ている。
強引な位じゃないと、7歳年下の俺は…
男として意識してもらえないだろう…
「…名前で呼んでくれないと、
俺…振り向きませんし、返事しません。
さぁ、もう家に 入ってください」
今日一番の困惑した表情の真琴さん。
「え…あ、あのっ…」
何をどう返したら良いか分からない…
そんな様子の真琴さん…
そうさせているのは、俺なのだが…
「真琴さんが家に入ったのを
見届けないと、俺…安心して帰れないです
よ」
笑顔でそう言い、真琴さんの両肩に手を置き、身体を反転させ…そっと背を押す。
真琴さんに触れたのは、
これが初めて…
凄く…胸が高鳴る…
「そのまま…振り向かないで、
家に入って下さい。
お休みなさい…真琴さん」
俺に背を押され、一歩一歩進み…
ドアの前で立ち止まる。
真琴さんの後ろ姿を、ただ見つめていた俺に…
「お…送ってくれて、有り難うございまし
た! お休みなさいっ‼」
振り向いて、早口で再度お礼を言って、
家の中に入って行った。
真琴さんの顔…真っ赤だった…
「…振り向かないでって…言ったのに…」
少しは…俺を意識してくれただろうか?
俺の気持ち…少しは伝わった?
ずっと、苗字呼びの男が…
女性の名前を呼ぶのは……
好意の表れ───
真琴さん…
あなたにもっと、近付きたい……