GENERATIONS LOVE
【side 真琴】


オーナーこと…大ちゃんに報告があるという
神山さんを残して、スタッフルームへ向かう。
大ちゃんが作った賄いの良い匂いが、
部屋中に立ち込めてる。


「今日の賄いも、めっちゃ旨そうっ‼」


賄いに今すぐ飛び付きそうな勢いの谷山さんに、


「潤くんっ、着替えが先っ‼」


水城さんが間髪いれずに注意する。


「は~い、着替えてきまぁーす!」


ふたりのやり取りを微笑ましく見ながら、自分も着替えてしまおうと、
ロッカーから私服を取り出す。


それぞれが着替えを済ませ、
賄いに手を伸ばす。
直ぐに戻ってくると思っていた
神山さんは、まだ来ない。


このままだと、神山さんの分…無くなっちゃうかも…


賄いの横に、
取り置きタッパーが目に入る。


神山さんの好き嫌いは分からないけど、
取り置きしといたら良いかな…、


それから数十分後───


神山さんがスタッフルームに戻って来た。
谷山さんと話ていたので、
会話が終わったら、タッパーを渡して…
私はそろそろ帰ろうかな…
そう思っていたら、神山さんが私を見ていることに気付く。
時々───
神山さんがこうして、真っ直ぐな視線を
私に向けている時がある……
それは大体が、
ドルチェの中でのことだから……
指導係としての視線だと…
実習中だから、見ていてくれていると…
そう、思っていた……
それ以外…思い付かない…


「神山さんの分、タッパーに入れておきま
した。苦手なものとかあったら、ごめん
なさい」


そう言ってタッパーを手渡すと、
ふわっとした優しい笑顔で見つめられる。


「ありがとうございます。
俺、好き嫌いないんで、大丈夫です」


こんな表情もするんだ……


数分──神山さんの笑顔に釘付けになっていたことに気が付いて…慌てて我に返る。


年甲斐もなく、見惚れるなんてっ‼
何やってんの、私…恥ずかしい…


「……そ…それじゃ、私は…」


『帰る』という一言を言い終えぬまま…
神山さんの言葉に遮られる。


「香坂さん、少し待っててもらって良いで
すか?着替えてくるんで…」


「…えっ…!?あ……はい…」


有無を謂わさぬ
神山さんの雰囲気にのまれ…
思わず、そう返事をしていた。


「お待たせしました」


「…え…?」


すっかり帰り支度を済ませた神山さん。


何か用があったんじゃなかったの?


谷山さんに水城さんを送るよう話し、
そのままふたりに挨拶されたので…


「…お、お疲れ様です……??」


条件反射でそう、返したものの…
神山さんの意図するものが分からない…


他のスタッフに声を掛け、
私に向き直る。


「行きましょうか」


「え…あの、神山さんっ!?」


神山さんはその一言を最後に、
そのままスタッフルームを出て、
裏口へ足を進める。


神山さんの意図を全く掴めず…
私はただ…
神山さんを追い掛けることしか出来なかった。
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