GENERATIONS LOVE
表通りに出たところでやっと、
神山さんが足を止め、私に振り返る。


「出過ぎた真似かもしれませんが、
送ります。こんな時間ですし…」


その言葉で、送ってくれようとしていたことが分かる。


「お気持ちは…有り難いんですが…私の家、
ドルチェからすぐ近くですし…大丈夫です
よ!」


家がすぐ近くであれば、納得してくれるかな…?
歩いて10分程度…
表通りの明るい道を通れば、大丈夫。
そんな私の返答に反して…


「週末は…平日より閉店が遅いので、
方向が大体一緒の男性スタッフが、
女性スタッフを送ってくことになってる
んですよ。谷山も茜ちゃん送ってくし…
俺の家も、ドルチェの近くなんで…
あと…送りがてら話したいことがあるの
で…」


「…でも…」


その好意は凄く嬉しい。
それでも頷けないのは、誰よりも仕事をこなしていたのを見ていたし…
それでなくても、
昼間は大学があったのだから…
22歳で体力があるとしても、
疲れていないはずない…
これ以上、負担を掛けたくなかった。
そんな私の気持ちとは別の…
予想もしない言葉が返ってきた。


「俺が…心配なんです。ここで別れて、
夜道で香坂さんに何かあったら、絶対に
後悔する。そうならないためにも…
俺に、送らせてくれませんか?」


ただ、家に送るだけの話なのに…
こんなに真摯に言われたのは…
初めて……
責任感とかかもしれないし、
優しい神山さんは、きっと誰が相手でも
同じように言うのかも…
でも…これは…
何だか…特別な気持ちが込められているように感じてしまい…
勘違いしてしまいそうで…
今…絶対に顔が赤くなってる…
そんな顔は見られたくなくて…


「……そういうことなら……
宜しく…お願いします…」


顔を隠したくて頭を下げる。
気付いてはいけない気持ちが…
波のように押し寄せて…
捕らわれてしまいそうで怖い……


頭のどこかで──
これ以上考えてはいけない…
これ以上は進んではいけないと…
シグナルが鳴っているのを感じていた──
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