GENERATIONS LOVE
【side 真琴】
目が回る程忙しかった時間が過ぎ、店が閉店し、スタッフが次々と帰宅する中、私は今、オーナーこと、大ちゃんとキッチンにいる。翌日の仕込みをしている大ちゃんに…
オーナーに今日の失態を謝罪するため。
「今日は本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げる。
「反省しているなら、良いよ。
でも、2度目はないよ。
同じ失敗は繰り返さないように」
「はい」
昨日の夜から、心が落ち着かない。
仕事に集中しなきゃいけないと、思えば思うほど…空回りしてばかり。
「入店して1週間目にして、一番失敗が多
かったね?」
オーナーの顔から、普段姪の私に接する顔になる大ちゃん。
「失敗は自分が悪いし、そのせいで、
ホールのふたりの足引っ張っちゃって…
本当に申し訳ないって思ってる。
唯でさえ…
神山さんの抜けた穴は大きかったのに」
「昨日と今日…来店客の数は同じだよ。
でも、今日の方が忙しく感じた?」
大ちゃんの言葉に無言で頷く。
「観察力と洞察力…加えて判断力…
ホール全体を見回しながら、その時々に
合わせて行動する。スタッフに指示を出
しなが 人一倍動く…
常に自分より、
他者に目を向ることが出来る…か…
最近は、
俺の味も再現出来るようになって、
キッチン側に居ても腕が立つ」
誰のことを指しているのか、分かる。
来客数が同じで、神山さんが居た昨日と、神山さんが居なかった今日の違い。
昨日は何事もスムーズに進んでいた。
「大きいなぁ、修二くんの存在感。
手放すのが惜しいわ…」
まるで独り言のように呟く大ちゃん。
「真琴もそう思うでしょ?」
と、思った途端に話を振られる。
「…えっ!?」
「頭良し、顔良し、仕事出来る、
性格良しのバーフェクト!
男として優良物件…だと思わない?」
「……………思う………けど………」
それ以上の、何を言ったら良いのか分からず、口を閉ざす。
大ちゃんが言うように、22歳の若さで、
全てに於いて完璧で、7歳の歳の差を感じない程、彼は素敵な人だ。
だからこそ、心が惹かれてしまう。
惹かれてしまっている。
はっきり言われた訳じゃない今なら、
今ならまだ…引き返せる…筈…
「『会いたい人に会えないのが残念だ』
修二くんの言葉を、伝えたよね?」
開店準備中に聞いた言葉。
条件反射のように、顔が火照る。
「なっ…!?何で…今…それ…言うの?
というか、大ちゃんはどこまで知って
るのっ!?」
「面白いくらいの動揺っぷりだな?」
私の反応に笑いながら、私の質問とは違う言葉が返ってくる。
面白がられたい訳じゃない。
無言で睨む。
「悪かったって。
修二くんの言葉の、続きがあったんだけ
ど、言うの止めとく。
すぐ分かることだから。
あと、俺がどこまで知ってるかは……
内緒だ」
悪いと言っても、本当に悪いと思ってない大ちゃんの態度。突き詰めても、墓穴を掘るような気がして、押し黙る。
「それより、明日は真琴の歓迎会だから、
19時にアラカルトな!」
「うん、分かった」
大ちゃんが壁時計を見上げる。
「さぁ今日はもう帰りな。お疲れ様!」
「お、お疲れ様です?お先に失礼します」
時刻を確認してからの大ちゃんに、
追い出されるように、
キッチンを後にする。
いつもなら、気を付けて帰れって言ってくれるのに…
年が近くても姪っ子なんだから。
ぶつぶつと、心の中で大ちゃんに毒づきながら、裏口を出て表通りを目指す。
昨日は…神山さんが送ってくれたんだよね。
心配だからって…
あ…また、考えてる。
今ならまだなんて言いながら、
本当に止められるの?
店の前に出たところで、
「お疲れ様です、真琴さん」
「…え…?」
居るはずがない…居るとは思わなかった
神山さんが目の前に居る。
驚きで固まる私に、穏やかでとても優しい眼差しを向けてくれる。
彼の顔を見た瞬間、
彼の声を聞いた瞬間──
きゅっと、胸が甘く締め付けられる。
芽生えた気持ちを…
止められないと実感した。
目が回る程忙しかった時間が過ぎ、店が閉店し、スタッフが次々と帰宅する中、私は今、オーナーこと、大ちゃんとキッチンにいる。翌日の仕込みをしている大ちゃんに…
オーナーに今日の失態を謝罪するため。
「今日は本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げる。
「反省しているなら、良いよ。
でも、2度目はないよ。
同じ失敗は繰り返さないように」
「はい」
昨日の夜から、心が落ち着かない。
仕事に集中しなきゃいけないと、思えば思うほど…空回りしてばかり。
「入店して1週間目にして、一番失敗が多
かったね?」
オーナーの顔から、普段姪の私に接する顔になる大ちゃん。
「失敗は自分が悪いし、そのせいで、
ホールのふたりの足引っ張っちゃって…
本当に申し訳ないって思ってる。
唯でさえ…
神山さんの抜けた穴は大きかったのに」
「昨日と今日…来店客の数は同じだよ。
でも、今日の方が忙しく感じた?」
大ちゃんの言葉に無言で頷く。
「観察力と洞察力…加えて判断力…
ホール全体を見回しながら、その時々に
合わせて行動する。スタッフに指示を出
しなが 人一倍動く…
常に自分より、
他者に目を向ることが出来る…か…
最近は、
俺の味も再現出来るようになって、
キッチン側に居ても腕が立つ」
誰のことを指しているのか、分かる。
来客数が同じで、神山さんが居た昨日と、神山さんが居なかった今日の違い。
昨日は何事もスムーズに進んでいた。
「大きいなぁ、修二くんの存在感。
手放すのが惜しいわ…」
まるで独り言のように呟く大ちゃん。
「真琴もそう思うでしょ?」
と、思った途端に話を振られる。
「…えっ!?」
「頭良し、顔良し、仕事出来る、
性格良しのバーフェクト!
男として優良物件…だと思わない?」
「……………思う………けど………」
それ以上の、何を言ったら良いのか分からず、口を閉ざす。
大ちゃんが言うように、22歳の若さで、
全てに於いて完璧で、7歳の歳の差を感じない程、彼は素敵な人だ。
だからこそ、心が惹かれてしまう。
惹かれてしまっている。
はっきり言われた訳じゃない今なら、
今ならまだ…引き返せる…筈…
「『会いたい人に会えないのが残念だ』
修二くんの言葉を、伝えたよね?」
開店準備中に聞いた言葉。
条件反射のように、顔が火照る。
「なっ…!?何で…今…それ…言うの?
というか、大ちゃんはどこまで知って
るのっ!?」
「面白いくらいの動揺っぷりだな?」
私の反応に笑いながら、私の質問とは違う言葉が返ってくる。
面白がられたい訳じゃない。
無言で睨む。
「悪かったって。
修二くんの言葉の、続きがあったんだけ
ど、言うの止めとく。
すぐ分かることだから。
あと、俺がどこまで知ってるかは……
内緒だ」
悪いと言っても、本当に悪いと思ってない大ちゃんの態度。突き詰めても、墓穴を掘るような気がして、押し黙る。
「それより、明日は真琴の歓迎会だから、
19時にアラカルトな!」
「うん、分かった」
大ちゃんが壁時計を見上げる。
「さぁ今日はもう帰りな。お疲れ様!」
「お、お疲れ様です?お先に失礼します」
時刻を確認してからの大ちゃんに、
追い出されるように、
キッチンを後にする。
いつもなら、気を付けて帰れって言ってくれるのに…
年が近くても姪っ子なんだから。
ぶつぶつと、心の中で大ちゃんに毒づきながら、裏口を出て表通りを目指す。
昨日は…神山さんが送ってくれたんだよね。
心配だからって…
あ…また、考えてる。
今ならまだなんて言いながら、
本当に止められるの?
店の前に出たところで、
「お疲れ様です、真琴さん」
「…え…?」
居るはずがない…居るとは思わなかった
神山さんが目の前に居る。
驚きで固まる私に、穏やかでとても優しい眼差しを向けてくれる。
彼の顔を見た瞬間、
彼の声を聞いた瞬間──
きゅっと、胸が甘く締め付けられる。
芽生えた気持ちを…
止められないと実感した。