GENERATIONS LOVE
【side 真琴】


沙紀が私と行きたいと言って、
着いた場所は、もう何年も訪れることがなかった場所だった。


「…今度の作品に、遊園地使うの?」


中学の頃から、
文章を書くのが、とても上手だった沙紀。
高校生の頃には、いつの間にか小説家としてデビューしていた。
今では女子中高生が注目する、恋愛小説の作家で、本屋で沙紀が書いた本がずらっと並んでいるのを見ると、とても誇らしい気持ちになる。


「えっと……使う……かも……?
あ、中入る前に、
ちょっと…そこのベンチに座ろう。
それで……私も、真琴に訊いてほしいこと
があって……」


「うん……良いよ」


珍しく歯切れの悪い沙紀。
疑問に思いながらも、沙紀と一緒にベンチに腰掛ける。


「……沙紀?」


何だか思い詰めた様子が気になり、呼び掛ける。
沙紀は言葉を発しようと、口を開くけど、
声にはならずを、繰り返す。


「あ…!?もしかして?
沙紀、好きな人出来たの?」


「……えっ!?ど……う、かな……?」


でも、沙紀の顔が赤いのは気のせいじゃないと思う。腰まで伸びたストレートの黒い髪を、後ろに一つに縛り、綺麗な目に高く通った鼻筋…眼鏡がよく似合う美人。
女の私から見ても、憧れるのに…


『私は地味だから……』


なんて、言う。
昔からの沙紀の口癖。
地味じゃなくて、落ち着いているから、
沙紀に気がある男の人は、
高嶺の花だと思って、ただ遠くから見ていた。
私の記憶の中で、沙紀が恋人を作ったことはない。
もし、今沙紀に好きな人が居て、その人が
沙紀のこと大切に想ってくれたら、私は心から嬉しい。
自然と笑みがこぼれる。


ふと……視線を感じて、そちらの方に顔を向ける。


嘘……でしょ……
どうして、修二くんが……!?


街中で偶然会うのとは訳が違う。
待ち合わせしたりしなきゃ……


修二くんの隣で、一樹くんが手を振っている。
ここに来る前に、沙紀が誰かとメールしてた。
……一樹くんだったんだ‼
ふたりが照らし合わせたことだと、気付いたのと同時に、真っ直ぐ私を見る修二くんと視線がぶつかる。


ただそれだけで、胸の鼓動が高鳴る。
昨夜のことが、一気にフラッシュバックして、顔が火照りだす。
恥ずかしさで、俯くことしか出来ない。


──ガタッ‼


私が俯いたのと同時に、沙紀がベンチから立ち上がる。


「沙紀?」


突然立ち上がった沙紀を見上げ、声を掛けても、沙紀は答えない。視線だけは、修二くん達の方を向けたまま……
立ち尽くす沙紀に、もう一度呼び掛けようとした、その時……


「真琴ちゃん、久し振りだね」


一樹くんに話し掛けられ、思わず振り向いてしまう。
一樹くんに、返事をしようにも…
目の前の修二くんが視界に入った瞬間……


かあーっと、顔が赤くなる。
自分の気持ちを肯定してしまったからか、
余計に意識してしまう。


「……そう……だね」


何とか絞り出した言葉は、
それだけだった。
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