GENERATIONS LOVE
再度俯きそうになったところで……


「沙紀」


一樹くんが沙紀を呼ぶ。
その声に弾かれてか、一歩後ろへ後退する沙紀。
笑顔の一樹くんは、一歩沙紀に近付く。


「何で逃げんの?」


「……一樹が……近付くから……」


そう言ってまた沙紀が一歩後退すれば、
一樹くんも一歩、歩みを進める。


「だっーて、沙紀が約束すっぽかすから」


「……あんなのっ、一方的に一樹が決めただ
けでしょ?……私は……了承してない……」


何となく……沙紀が怯えてるような感じがするけど、口を挟める空気でもなくて、ふたりの様子を見ていた。


沙紀の背中が壁にぶつかり、これ以上後ろに下がれなくなったところで……


──ドンっ‼


沙紀を囲うように両腕を伸ばし、壁に手をつけ、壁と一樹くんの身体が沙紀を挟む。


「逃がさないよ」


「……っ!?離……して……こんなとこで、こん
な冗談……止めて……」


沙紀がそう言った後、
さっきまで笑顔だった一樹くんが、真剣な顔で沙紀を見つめる。
その強い視線から逃げるように、視線を下げ、俯く沙紀。


……こんなにスキンシップ過多な姉弟だっただろうか?
傍から見たら、今のふたりは、まるで……


「離さないし、止めない。
俺の気持ち……まだ冗談にする気?」


そう言って、左腕を折り更に沙紀との距離を詰める一樹くん。
沙紀の耳元て、沙紀にしか聞こえないように、何かを囁いた。
右手の親指と人差し指で、
沙紀の顎を上げ、一樹くんはそのまま顔を近付けた。


「……っ!?え……!?」


「……っ!?」


私と修二くんが同時に息を飲んだ。


最初は啄むような軽いキスが、
顔の角度を変え、
段々深くなっていくのが、ふたりの口元から紡ぐ音で分かる。
壁につけていた左手は、いつの間にか沙紀の後頭部に添えられていて、右腕は沙紀の腰に回していた。
……震える沙紀の手が、一樹くんの胸元の服をきゅっと掴んでいる。


え!?えーー‼
親友の濃厚過ぎるキスシーンを目の当たりにしている現実にも、驚いているけれど……
それよりも、何で……何で!?
沙紀と一樹くんキスしてるのっ!?
姉弟の、余りに有り得ない様子に
パニックを起こし掛けていた私の肩に…
そっと優しく触れる修二くん。


「真琴さん、先に中に入ってようか?」


その言葉の後、彼は私の手を取り、
ベンチから立たせ…手を繋いだまま、
入場口へ向かう。


修二くん…耳の後ろまで赤い。
きっと私も、同じくらい赤くなってる筈。


何とも言えない空気と沈黙の中で、
修二くんの手のぬくもりと、温かさに包まれ、強張っていた気持ちが少しだけ、解れるように感じた。
それだけじゃない気持ちも……
どきどきするのは、先程の光景の影響がないとは言えないけど、修二くんに触れているから……
私よりずっと大きくて、優しい手。
この手にずっと包まれていたい。
そう、思った。
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