GENERATIONS LOVE
コックコートを脱いで、畳んでいると、


「俺、総一朗に用あるから、それ返して来
るよ」


「すみません、お願いします」


森田さんはそのまま出て行く。
心なしか機嫌が良い……ように感じる。
真琴さんの隣の席に戻ると、すぐに真琴さんが声を掛けてくれた。

「気が付いたら、修二くん居なくて……
心配しました」


お酒が入ったせいか、ほんのり頬が赤い
真琴さん。


「寂しかったですか?」


隣に座る真琴さんの顔を、
横から覗きこむ。


「また、そんなこと言って!
……私 パウダールーム行ってきます」


あー今日1日で耐性ついてしまったかな?

腕時計に視線を向ける。
結構、いい時間だな……
皆、ほろ酔いだし。
中には泥酔してる奴もいるけど。


真琴さんが出て行ってから、
5分以上経ってる気がする。


もしかしてっ!?
悪い予感がして、慌てて宴会場を出る。
パウダールームの奥の廊下から、人の声がする。


「離してくださいっ‼」


真琴さんの切羽詰まった声がする。


「えーそんなこと、言わないでさー、
仲良くしようよー、お姉さん、めっちゃ
僕のタイプなんだー‼
なんなら、ここでキスしよっかー?
あー、その潤んだ目で見られたら、我慢で
きない」


「いやっ‼やめてっ‼」


金髪頭のチャラそうな男が、真琴さんの両腕を掴んで、今にもキスする勢いで顔を近付け、迫っている様子に、


──ブチッ‼


と、俺の中の何かが切れた。


真琴さんを掴んでいた腕を、右手で後ろに捻り上げる。
左手で、真琴さんを自分の方へ引き寄せ、肩を抱く。


「いっ!?痛い痛い‼」


「おい、てめぇ……酒に酔った勢いで、
何してくれてんだ?俺の大切な人に何して
んだって訊いてんだろっ‼」


掴んでた腕に更に力を入れる。
これ以上ない程、どすの利いた低い声が出た。


「嫌がる女に無理強いすんじゃねぇ‼」


男の腕を、勢い良く前に放すと、
男は前のめりになり、顔から床に転んだ。


「ひー‼す、すみませんでしたぁ‼」


顔面打ったくせに、怯えた男は脇目も振らずに、一目散に逃げて行った。
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