GENERATIONS LOVE
【side 真琴】
──2年前──
いつも通り、会社に出社する蓮を見送るため、玄関へ向かう。
靴を履いた彼に、上着を掛け、鞄を渡す。
「今日も遅いの?」
「あぁ……何時になるか分からないから、
真琴は先に寝てて。
寂しい思いさせてごめん。愛しているよ
真琴……」
そう言って、脣にキスをする。
彼の背中を見送り、
無意識に溜め息が漏れる。
最近、ずっと遅い帰宅が続いていた。
夫は橘グループのひとり息子で、
次期社長。
いくつものホテルを経営している。
結婚前、そのホテルでフロントの仕事をしていて、何度も面識はあったが、所詮雲の上の人と思っていた。
何度もアプローチされて、優しい彼が好きになり、結婚を決めた。
家族や周りには、玉の輿なんて言われたけど、皆祝福してくれた。
──ただ、ひとりを除いて……
『あいつは駄目だ‼
いつか、真琴が傷付く時がくる‼』
最後まで反対して、結婚式にも出席してくれなかったのが、大ちゃんだった。
結婚3年を過ぎた頃……
姑から、
『子供はまだなの?』
『何故妊娠しないの?』
『跡取りを産むのがあなたの役目なのよ‼』
顔を合わせば、そのことばかりで……
気が滅入る毎日だった。
姑の要望で産婦人科に連れて行かれ、
検査まで受けさせられたこともあった。
身体には何の問題もなかった。
『排卵日に必ず、しなさいね』
そんなことまで命令されるの?
愛を確かめ合ったり、育むもの……
そう思っていたのに……
義務的にするものなの?
そのうち、仕事が忙しい彼は帰宅が
遅くなり、排卵日がどうこうの話ではなくなった。
そんなある日──
──ピーンポーン
玄関のドアを開けると、ホテルで一緒に働いていた後輩の子が立っていた。
名前は柊 歩美。
突然の彼女の来訪……
私に話があるというので、家に招き入れた。
「……いつまで、ここに居るつもり?」
「……え?……」
挑むような彼女の視線。
唐突の言葉に驚く。
「早く蓮さんと別れてくれない?
蓮さんが言ってた。真琴が別れるのを納得
してくれないって……」
彼女の言ってる意味が分からない。
別れるのを納得してくれない?
誰が?
蓮と別れ話をしたこともないのに……
今朝だって、いつも通り──
『愛しているよ、真琴』
そう、笑って出掛けて行った。
黙っている私に、追い討ちをかける彼女。
「私……赤ちゃんが出来たの。
蓮さんの子よ」
目の前が真っ暗になる。
今まであったものが、全て音をたてて崩れ去るように……
「まさか、仕事で毎日j遅いと思ってた?
蓮さん……昨日も私の部屋にいたわ。
妊娠報告したら、喜んでくれたわよ」
せせら笑う彼女。
「愛する人の子供も産めないなんて、妻と
しての意味……ないんじゃない?」
立ち上がり見下ろしながら、
「そういうことだから、早く消えて」
彼女が居なくなった後……
私はその場から動けなかった。
「真琴さん」
姑の声に弾かれる。
「話は歩美さんから、聞いたみたいね。
これにサインしなさい」
テーブルの上には一枚の紙。
それが何なのか、直ぐに理解するが、信じられなかった。
彼から何も聞いていない。
それなのに、夫の欄には……
確かに彼の筆跡で文字が埋められている。
私がサインした離婚届を持ち、分厚い封筒をテーブルに置いた姑。
「恨むなら、
子供を身籠ることが出来なかった自分を
恨むのね。
明日にでも、荷物をまとめて出ていきな
さい 」
その一言を残して、部屋を出ていく。
誰も居なくなった部屋で、
声をあげて泣いた。
──2年前──
いつも通り、会社に出社する蓮を見送るため、玄関へ向かう。
靴を履いた彼に、上着を掛け、鞄を渡す。
「今日も遅いの?」
「あぁ……何時になるか分からないから、
真琴は先に寝てて。
寂しい思いさせてごめん。愛しているよ
真琴……」
そう言って、脣にキスをする。
彼の背中を見送り、
無意識に溜め息が漏れる。
最近、ずっと遅い帰宅が続いていた。
夫は橘グループのひとり息子で、
次期社長。
いくつものホテルを経営している。
結婚前、そのホテルでフロントの仕事をしていて、何度も面識はあったが、所詮雲の上の人と思っていた。
何度もアプローチされて、優しい彼が好きになり、結婚を決めた。
家族や周りには、玉の輿なんて言われたけど、皆祝福してくれた。
──ただ、ひとりを除いて……
『あいつは駄目だ‼
いつか、真琴が傷付く時がくる‼』
最後まで反対して、結婚式にも出席してくれなかったのが、大ちゃんだった。
結婚3年を過ぎた頃……
姑から、
『子供はまだなの?』
『何故妊娠しないの?』
『跡取りを産むのがあなたの役目なのよ‼』
顔を合わせば、そのことばかりで……
気が滅入る毎日だった。
姑の要望で産婦人科に連れて行かれ、
検査まで受けさせられたこともあった。
身体には何の問題もなかった。
『排卵日に必ず、しなさいね』
そんなことまで命令されるの?
愛を確かめ合ったり、育むもの……
そう思っていたのに……
義務的にするものなの?
そのうち、仕事が忙しい彼は帰宅が
遅くなり、排卵日がどうこうの話ではなくなった。
そんなある日──
──ピーンポーン
玄関のドアを開けると、ホテルで一緒に働いていた後輩の子が立っていた。
名前は柊 歩美。
突然の彼女の来訪……
私に話があるというので、家に招き入れた。
「……いつまで、ここに居るつもり?」
「……え?……」
挑むような彼女の視線。
唐突の言葉に驚く。
「早く蓮さんと別れてくれない?
蓮さんが言ってた。真琴が別れるのを納得
してくれないって……」
彼女の言ってる意味が分からない。
別れるのを納得してくれない?
誰が?
蓮と別れ話をしたこともないのに……
今朝だって、いつも通り──
『愛しているよ、真琴』
そう、笑って出掛けて行った。
黙っている私に、追い討ちをかける彼女。
「私……赤ちゃんが出来たの。
蓮さんの子よ」
目の前が真っ暗になる。
今まであったものが、全て音をたてて崩れ去るように……
「まさか、仕事で毎日j遅いと思ってた?
蓮さん……昨日も私の部屋にいたわ。
妊娠報告したら、喜んでくれたわよ」
せせら笑う彼女。
「愛する人の子供も産めないなんて、妻と
しての意味……ないんじゃない?」
立ち上がり見下ろしながら、
「そういうことだから、早く消えて」
彼女が居なくなった後……
私はその場から動けなかった。
「真琴さん」
姑の声に弾かれる。
「話は歩美さんから、聞いたみたいね。
これにサインしなさい」
テーブルの上には一枚の紙。
それが何なのか、直ぐに理解するが、信じられなかった。
彼から何も聞いていない。
それなのに、夫の欄には……
確かに彼の筆跡で文字が埋められている。
私がサインした離婚届を持ち、分厚い封筒をテーブルに置いた姑。
「恨むなら、
子供を身籠ることが出来なかった自分を
恨むのね。
明日にでも、荷物をまとめて出ていきな
さい 」
その一言を残して、部屋を出ていく。
誰も居なくなった部屋で、
声をあげて泣いた。