GENERATIONS LOVE
泣いて……泣いて……
全てが嘘であったらと思うのに、
姑が置いていった封筒が、事実なのだと主張する。


封筒の中身は、数十枚ものお金……


「……こんなものっ‼」


私はその封筒を投げつけた。
リビングにお金が舞う。


そのまま寝室に向かい、スーツケースに持てるだけの服を入れ、必要なものを詰め込んだ。
荷づくりが終わった直後……


──タッタッタッ、バタン‼


「真琴っ‼」


目の前に、蓮が居る。
息を切らし、
ドアの前で立ち尽くしている。


この人は私を裏切った人。
笑顔と優しさで、平気で嘘をつく。


「……別れたいなら、他に好きな人が出来た
なら、蓮が言えば良かったのに……」


泣かない。


「……違うっ‼俺は今でも、
一番真琴を愛してる」


泣いたりしない。


「そんなこと、信じられない。
愛してる人に、平気で嘘つくの?
愛してるのに……他の人と……子供つくると
か……理解できない」


「……それは……」


この人の前で


「離婚届……蓮のサイン済みだった。
蓮も、離婚を望んでいたから……」


「お袋に書かされたんだ‼……真琴は……
書かないと思った。真琴……確かに僕は
不貞をしたし、君をたくさん傷付けた。
でも、僕の口から別れを言い出さなかっ
たことを、分かってくれないか?
真琴を愛してる気持ちに嘘はないんだ」


何を言っても、平行線のような気がして……
私は、それ以上言葉を発しなかった。
スーツケースを引いて、部屋を出ようと、彼の前を通り過ぎる。
その瞬間──


「真琴っ‼どこへ行く気なんだ⁉」


蓮が私の手首を掴む。
言い様のない嫌悪感が、身体中に走る。


──パシッ‼


「触らないでっ‼」


蓮の手を払いのけ、足早に玄関に向かう。
左手でドアのぶをつかんだ瞬間、薬指に光るものが目に入る。
力任せにそれを指から抜き、靴棚の上に置く。
そのまま、空港へ向かう。
実家に真っ直ぐ戻る気にもなれなくて、
さ迷っていたら……


「真琴?」


懐かしい声に顔を上げる。
大ちゃんの顔を見た途端、我慢していた涙が溢れてくる。


私の姿を見て、
悟った大ちゃんは優しく迎い入れてくれた。


離婚後、実家に戻っても、鬱状態で……
何もする気が起きなかった。
家族は、腫れ物に触るように気を遣うし。
大ちゃんだけ、結婚前と変わらずに接してくれた。
実家に何度か蓮から連絡があったみたいだけど、
私は戻って来ていないと、取り次がないでくれた。


2年間、自分の殻に閉じ籠って……
家族や友達に心配かけて……
このままでいいわけない。
いつまでも、引きずっていたくない。
早く、私の中から忌まわしい記憶が薄れないと、前に進めない。
そう思い始めた時に……


「真琴、俺の店で働いてみないか?」


大ちゃんが声を掛けてくれた。


ドルチェで働くことを決めて、部屋を借りて……ちゃんと自分の力で生きていこう。


失う痛みを背負うなら、
もう誰も好きにならない。
信じて……傷付くのは……もう、嫌なの……


もう、あんな思いはしたくない。


そう強く思っていたのに……
私は、また……恋をした──
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