それはきっと、君に恋をする奇跡。
先生の仕切り直しで、もう一度最初から歌い始めると。
今度は大きな声が届いてきた。
太くて芯のある、それでいて抑揚のしっかりついた綺麗なメロディーライン。
……ん?
誰かやる気出した?
そう思って左右に視線を振ると、あるひとりの男子で目がとまった。
え……水瀬くん?
声の特定なんて出来ないけど。
背筋をのばして口を大きく開けてるのを見ると、この声は水瀬くんだと確信する。
「水瀬くん!あなた良い声してるじゃない!!」
それは先生も気づいたみたいで。
曲が終わると、先生は目を輝かせて水瀬くんを褒めた。
「みんなももっと声出そうぜ。どうせカラオケじゃこの曲熱唱してんだろ?」
水瀬くんの言うことは間違ってない。
この曲はカラオケのチャートでも上位だし、みんな歌ったことはあるはず。
あたしもスマホにダウンロードしてるし。