それはきっと、君に恋をする奇跡。
……これからのあたし……。
まだ見えない自分の未来に想いを馳せたとき。
微かな風が吹いて、あたしの髪を巻きあげた。
「じゃあ、また明日な」
いつの間にか、電車はホームに入ってきていて。
蒼はあたしの頭をくしゃくしゃと撫でると電車へと促した。
「あ、うん……また明日……」
余韻を残したまま、ふたりを隔てる扉。
その向こうで手を振る蒼。
いつもやんちゃなイメージな彼の、すごく大人びた一面を見た気がして。
心がまだ追いつけない。
「蒼……か」
蒼の名前を小さくつぶやく。
あたしが蒼に出会ったのも、ちゃんと意味があるんだよね……。
その姿を目に焼き付けるあたしの胸は、静かに、でも確実に高鳴っていた。