それはきっと、君に恋をする奇跡。
……目の前の蒼は。
昨日、バカみたいにカラオケではしゃいでた蒼でもなく。
あたしを優しく明るく慰めてくれた蒼でもなく。
誰かを愛おしく想う……まったく別人のように思えた。
「……わかりましたっ、」
そんな風に言われたらこれ以上何も言えないんだろう。
女の子は軽く頭を下げて、化学室を出て行った。
続いて蒼も出ていく。
「ちょーっと、今の聞いたあ!?」
はーっ、と大げさに息を吐いて胸に手をあてる真由ちゃんは、目をキラキラ輝かせていた。
「さっきの蒼、すごい男らしくなかった?あたしがドキドキしちゃったよ!」
「そ、そうだね……」
大切にしたい子。
蒼にはそんな子がいたんだ。
でも好きじゃないって……どういう意味?
いまの言い方だと、好きよりも深い気持ちがこめられているように思えたのに。