それはきっと、君に恋をする奇跡。
午後の授業中。
隣の蒼の横顔をそっと盗み見る。
すごく眠たそう……。
ここに布団を持って来たら1秒で寝ちゃいそうなくらい。
さっき真剣な顔で告白を受けていた人とは別人みたいだ。
何度も告白されてるみたいなのに、ああやってひとりひとり丁寧に受け答えしてるのかな。
適当にあしらうんじゃなくて、女の子に期待させないように蒼は真剣にさっきの子と向き合ったんだと思う。
蒼らしいといえば、蒼らしいのかも。
相手にとってはツラい言葉だけど、ちゃんと向き合ってくれたならけじめもつけられるよね。
それが蒼の優しさなんだろうな。
だけど気になる。
『大切にしたい子がいる』
好きじゃないのに大切にしたいって……。
その子は蒼にとってどういう存在なんだろう。
もしかして、それはツラい恋なの?
蒼も、叶わないツラい恋をしているの?
普段はお気楽でなにも悩みもなさそうな蒼なのに。
はじめて存在を現した、蒼の"特別"な女の子。
どうしてか、モヤモヤと不思議な感覚が胸の中をうずまいて。
蒼からそんな風に思われている女の子が、ちょっとだけうらやましいと思った。