それはきっと、君に恋をする奇跡。


「陽菜も、ちゃんと笑えるようになったな」



……トクンッ。


いつかみたいに注がれる優しいまなざしに、心の中がじんわり温かくなる。



「……ありがとう。今、学校がすごく楽しいの」



……それは、蒼のおかげだよ。



「桜園になんか来なきゃ良かった……そう思っていたのに、今はここがあたしの居場所だって思えるようになったし、このクラスに入るとホッとする」



……蒼がいるから……。



「へー、それは良かった」



くしゃっと笑うその顔に、胸がまたトクンッと音を立てた。


蒼のその笑顔を見るたびに、最近は胸がキュって苦しくなる。


ツラいわけじゃないのに。



「じゃあ俺、陽菜のビタミンになれてる?」


「うん、なれてるなれてる」



笑いながらうなずくと、蒼も白い歯を出して笑ってくれた。


こんな風な心の底からの笑顔、ここ数日見ていなかった気がする。
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