それはきっと、君に恋をする奇跡。
そのせいで。
くらだない冗談を言ってくることもなくなって。
お菓子をくれることもなくなってしまった。
あたしは毎日の学校生活に物足りなさを感じるほど。
左からは、張りつめた空気さえ感じるようになっていた。
あたしはスカートのポケットからある物を取り出した。
いつか蒼がくれた"当たり"のガムの包み紙。
ニコちゃんマークが書かれたそれを、あたしはずっと捨てられず持っていた。
お守りのようにいつも持って。
時々そっと取り出しては眺めてるんだ。
……本物の、蒼の笑顔が見れないから。
今は、この笑顔だけが頼り……。
べつに、ピアスをつけてくれないことくらいなんとも思ってないのに。
……べつに、なんとも。
あたしはピアスを渡したことを、すこし後悔し始めていた。