それはきっと、君に恋をする奇跡。


「……あ、蒼?」



今気づいた風に目を丸くしてみる。


……けど、心の中は、焦りでいっぱい……。


暑いのに、体の中には冷たい風が流れる。



「何してんの?」


「えっと、暇だからちょっとサイクリングでもと……」



彼女の顔がハッキリ見えた。


大人な雰囲気で落ち着いた感じの、きれいな人。


あたしとはまったく正反対の。



……やだ、見たくない。



「サイクリング?こんな暑い中?」


「学校まで自転車で来てみたら、どのくらいかかるのなって前から気になってて……」


「ははっ!面白れーことするな!さすが陽菜だ」



お腹を抱えて大爆笑の蒼。


さすが……って、それ誉められてはないよね?


いつもの調子の蒼に、ちょっとだけ心にゆとりが生まれた。
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