それはきっと、君に恋をする奇跡。


「水分補給ちゃんとしてるか?飲み物持ってる?」



そんなにおかしかったのか、涙目になりながら自転車のかごを覗きこんでくる。



「えっと、持ってない……」


「それはダメだろー。ほら、これやるからちゃんと飲めよ」



すると、手に持っていたペットボトルを渡された。



───ポンッ。


その空いた手が、次はあたしの頭の上に乗って。



「帽子も被んねえで。熱中症になったらどうすんだ?」



……っ、


一瞬、息が止まったかと思った。


何回と繰り返されてきたこの仕草も、まさかここでされるなんて思わなくて。



……いいの?

彼女の前で。



いつものペースを崩さない蒼に、あたしの方が落ち着かない。
< 215 / 392 >

この作品をシェア

pagetop