それはきっと、君に恋をする奇跡。
「水分補給ちゃんとしてるか?飲み物持ってる?」
そんなにおかしかったのか、涙目になりながら自転車のかごを覗きこんでくる。
「えっと、持ってない……」
「それはダメだろー。ほら、これやるからちゃんと飲めよ」
すると、手に持っていたペットボトルを渡された。
───ポンッ。
その空いた手が、次はあたしの頭の上に乗って。
「帽子も被んねえで。熱中症になったらどうすんだ?」
……っ、
一瞬、息が止まったかと思った。
何回と繰り返されてきたこの仕草も、まさかここでされるなんて思わなくて。
……いいの?
彼女の前で。
いつものペースを崩さない蒼に、あたしの方が落ち着かない。