それはきっと、君に恋をする奇跡。
「あっつ!これじゃ頭こげるぞっ!?」
蒼は頭に触れたまま大げさにそう言うと、
「これも被っとけ!」
自分の頭に乗っていた黒のキャップをあたしに被せる。
シャンプーの香りなのか、ふわっといい匂いが鼻を掠めた。
一瞬にして、頭の温度が下がる。
けど。
……ほんとにいいの?
彼女が横にいるのに。
今日も優しさ全開……というより、親に心配されてる子供みたいな扱いだけど、彼女にしてみたら面白くないんじゃ……
チラリと彼女に目を移すと、微笑ましそうにこの光景を見ていた。
……蒼とはどういう関係なの?
……気にならないの?
……それとも、余裕の笑み……?
「蒼くん、先行ってるね」
そこへ彼女が遠慮がちに声を掛けてきた。