それはきっと、君に恋をする奇跡。


「あっつ!これじゃ頭こげるぞっ!?」



蒼は頭に触れたまま大げさにそう言うと、



「これも被っとけ!」



自分の頭に乗っていた黒のキャップをあたしに被せる。


シャンプーの香りなのか、ふわっといい匂いが鼻を掠めた。


一瞬にして、頭の温度が下がる。



けど。



……ほんとにいいの?

彼女が横にいるのに。


今日も優しさ全開……というより、親に心配されてる子供みたいな扱いだけど、彼女にしてみたら面白くないんじゃ……


チラリと彼女に目を移すと、微笑ましそうにこの光景を見ていた。



……蒼とはどういう関係なの?


……気にならないの?


……それとも、余裕の笑み……?



「蒼くん、先行ってるね」



そこへ彼女が遠慮がちに声を掛けてきた。

< 216 / 392 >

この作品をシェア

pagetop