それはきっと、君に恋をする奇跡。
蒼は今どうしてる?
病院に行ったのかな……。
体操着袋を胸に抱えたまま想いを巡らせていると。
「陽菜……陽菜!」
「……っ、あ……」
真由ちゃんに声を掛けられて、あたしは相当険しい顔をしていたんだと気づいた。
顔を戻した今も眉間が痛いくらい。
「心配……だよね……」
あたしと蒼の間に起きた一連の出来事を知っている真由ちゃんは、気遣うように言う。
心配……なんてする資格あるのかな。
蒼を突き放したあたしが……。
その問いかけに答えられず下を向いたとき
「おい、マジで平気なのかよ」
「病院行って来いって」
騒々しい声と共に、男子たちが教室へ戻ってきた。
その中心にいるのは蒼。
友達に取り囲まれた蒼の指には、湿布が巻かれていた。
「突き指くらいで大げさだって。こんなのほっときゃ治る治る」