それはきっと、君に恋をする奇跡。
……ほんとに突き指なの?
険しい顔の男子たちとは反対に、蒼は余裕そうにしているけど。
本当は、ものすごく痛いんじゃないの?
人のことはすぐに見抜いてお節介を焼くくせ、自分は平気だと言って。
弱い所を見せようとしない。
蒼はそういう人だから。
夏休み前から感じていた蒼の異変は、今も時々感じる。
蒼の笑顔にどこか影があること。
あれだけ底抜けに明るい蒼だからそう感じるの。
あたしだから……分かるの。
真由ちゃんの言う通り、蒼を誰よりも見ているから。
告白を拒絶されても。
口を聞いていない今でも。
……蒼を突き放したくせに。
やっぱりあたしは蒼が好きみたい……
真由ちゃんがあたしに向かって念を押す。
「もし骨折だったら痛くて授業なんて受けていられないはずだよ。陽菜、隣なんだからちゃんと見ててあげるんだよ」
あたしに……できるかな。
「……うん」
自信はないけど、小さく頷いた。