それはきっと、君に恋をする奇跡。


コロッ……。


シャーペンが転がる音がした。



「……っ……」



軽く吐き出された吐息に、思わず隣に顔を振ると。


下唇を強く噛んで痛みに耐えている蒼の姿。



……蒼?



左の指は、湿布を貼った箇所がさっき見た時の倍くらいに腫れ上がって
いた。



「……!!!」



これじゃあシャーペンなんて握れるわけないよっ!


額には汗が浮かんでいる。



やっぱり、すごく痛いんじゃないの?


もしかしてほんとに骨折してたりして……!



どうしよう。


ここは躊躇ってる場合じゃないよね。


思い切って、声をかけようとしたときだった。



「蒼っ?どしたの?」



……声をかけたのは、列を挟んで隣の席の藤野さんだった。

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