それはきっと、君に恋をする奇跡。


……右手でも書けるの?


昔、左利きに憧れたことがあって、文字を書けるように練習してみたけど無理だった。


それなら左手でごはんを食べられるようにしよう!って頑張ったけど、それも疲れるだけで断念した。


そんなに簡単に、反対の手って使えるものじゃない。


もしかして両利き?


……にしては、なんとなくその文字に違和感。


お世辞にも上手と言えなくて、なんだかたどたどしい。


ちゃんと文字にはなっているけど、その角ばった文字は左で書いたものとは全く筆跡が違う。


筆跡って、左右で違うもの?



あんまりじっと見つめるのもおかしいよね。


視線って、案外ささるものだし。


気安く声が掛けられない今、その真相を確かめるすべもなく、あたしは自分のノートに向かった。
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