それはきっと、君に恋をする奇跡。


真由ちゃんと別れて、屋上へ向かう。


屋上へ行くのももう慣れた。


重い鉄の扉を開けた瞬間あたしを出迎えてくれた風は、もう秋のものに変わっていた。


肌を撫でる心地よさの中に、どことなく人恋しさを感じるような……。


ここから見る景色も初夏の頃とは随分ちがい、早い所では葉っぱの色も変わってきている。


街全体が見下ろせる、いつもの特等席に腰を下ろそうとして。



「……え……?」



目線の先に映り込んだ光景に動揺した。


正面に男子生徒がいたから。


しかもフェンスにもたれ掛るようにしてうずくまっている。



「あのっ、大丈夫ですか!?」



昼寝してるとかそんなんじゃなくて。


今にも地面に頭がついてしまいそうなくらいグッタリしてる。


かけ寄って、垂れた頭を支えるようにして見えた顔に息をのんだ。



「……ッ、蒼……!?」



それが蒼だったから。
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