それはきっと、君に恋をする奇跡。



「どうしたの!?手が痛むの!?」



まだ蒼の手には包帯が巻かれている。


咄嗟のことで、頭に浮かぶのはそのくらいのことしかない。



「あぁ……陽菜……」



やっとの思いであたしの名前を呼ぶ蒼は、意識さえも朦朧としていたんだろうか。

うつろな視線であたしを捉えた。



「どうしたのっ!?どこか苦しいのっ?」



何日ぶりにあたしの名前を呼んでくれたんだろうか、なんて淡い感傷に浸ってる場合じゃない。


それっきり、蒼はまた頭をクタッと下ろしてしまった。



「待ってて、すぐに助けを呼ぶから!」



あたしひとりじゃどうにも出来ない。

まずは誰かを呼んで来ようと、一旦蒼から離れようとすると。



「……っ」



グッと腕を掴まれた。
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