それはきっと、君に恋をする奇跡。


「……蒼?」



その力は思った以上に強く。

そのままあたしを抱き寄せるから身動きが取れなくなる。


なにが起きたのか分からず、頭が真っ白になったあたしに。



「……今だけ……

今だけ……このままで……いさせて……」



途切れ途切れにそう漏らす。


その声はか細かったけど、ハッキリあたしの耳に届いた。



「……蒼……?」



もしかして、あたしを誰かと間違えてる?


……だとしたら……。


このまま蒼を受け止めてもいいものか分からず、ふっと体を浮かすと。



「陽菜……」


「……っ」


「悪い……もう少しだけ、このままで……」



蒼があたしの名前を呼んで。


力の抜けたあたしの体をまた蒼が引き寄せた。




……あたし、なの?


蒼がいま必要としてくれてるのは、あたしなの?
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