それはきっと、君に恋をする奇跡。


……蒼は……なにに悩んでるの……?


蒼はとてもツラそうで、首筋には汗が滲んでいる。


夏前から感じていた蒼の異変は、やっぱり思い過ごしじゃなかったんだね。



教室ではいつも明るく笑っているのに。


今までもこんな風に屋上でひとり、ツラさを吐きだしてたりしたの?



蒼があんなにあたしを元気づけようとしてくれたのは、蒼自身なにかを抱えていたからなのかもしれない。


だから人の痛みや気持ちに敏感で。


あたしみたいに露骨に顔に出さず大人に振る舞って。


そのくせ、こんな限界になるまで弱さひとつ見せずに。



そう思うとすごく苦しくなった。



「……ごめん」


「……」


「……ごめんっ……」



あたしに体を預けながら、蒼は謝り続けた。


風だけが通り過ぎる屋上で、蒼の熱とあたしの熱とが混ざり合う。


あの日を境に視線すら合わせることのなかったあたし達が……。
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