それはきっと、君に恋をする奇跡。
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「人権についての論文の提出期限が先週だったはずなんだが……水瀬だけまだ出てないぞー。どうなってるー」
国語担当の担任の授業中。
少し前に締切を迎えた論文原稿を担任が催促をする。
「あー、今左手がこんな状態なんで、すっげー時間かかるんすよー。治るまで待ってもらえたらありがたいなーなんて」
言い方は軽いけど、理由としては正当。
400字詰めの原稿用紙2枚分にも及ぶ論文を書くには、利き手の自由が奪われた今、すごく大変な作業なはずだ。
あたしだって書くのが大変で、締切ギリギリになっちゃったもん。
なのに。
「イヤ待てない。クラス代表を選出しなきゃならんから、すぐに出してくれ」