それはきっと、君に恋をする奇跡。



教室に戻ると、さっき担任が予告した通り自己紹介がはじまる。


それをうわの空で聞いて自分の紹介も一言ですませると、午前中で今日の行程は終了した。




「陽菜ぁ……」



帰り支度を済ませた真由ちゃんが、心配そうにあたしの席にやってきた。



「きっとさ、遥輝くんにもなにか事情があるんだよ……」



優しく肩に手が乗せられる。


……うっ……。



「……だって、ハルくんから言って来たんだよ……桜園高校で会おうって。なのに、いないわけないっ……」



いないのはほぼ確実なのに。


それを認めたくないあたしは駄々をこねる子供みたい。



「でも……遥輝くんが入学してないのは本当みたいだし……」



そういう真由ちゃんは真由ちゃんで、会ったこともないハルくんのことを聞いて回ってくれていたみたい。



それはすごくありがたいけど。


ハルくんがいないのがどんどん現実味を帯びて……ツライよ。
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