それはきっと、君に恋をする奇跡。


『でも、もうちょっと待って……』



今思えば、とても真剣だった蒼の瞳。


あたしに力強く放ったその声は、願いがなかなか叶わないことへの焦りが含まれていたのかもしれない。


願掛けが実らず、何年も病気が治らない親友を思えばきっと苦しかったに違いない。



『これ以外つけるつもりないから』



ピアスをくれると言った藤野さんたちにそう言っていたのは、つけられないからこその優しさで……。


ピアスをあげてしまったあたしは……蒼を苦しめていたのかもしれない……。



「……っ……」



体が小刻みに震えだしたのは、寒さのせいじゃない。


その証拠に、ツウーーーと、あたしの頬を冷たいものが流れた。



どうしよう……。

どうしよう…………っ。



「ごめんな……この話、ちょっと重かったよな」



久保先輩の手が、そっと肩に乗る。



「いえっ……すみませんっ……。……あ、先輩これから部活ですよねっ、引き止めちゃってごめんなさいっ……」
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