それはきっと、君に恋をする奇跡。


気力なんてなくて。


席すら立てない。



「陽菜……やっぱり、口約束なんかじゃ……」


「……え?」



……口約束って。



「あ、ごめんっ……」



あたしの顔色が変わったのを見て、咄嗟に謝ってくる真由ちゃん。



「……」



……真由ちゃんだって、ほんとうはそう思ってたんだね。


小学校時代の約束をずっと信じてたあたしを、心のどこかで笑ってたんでしょ。



「ひどいっ……真由ちゃんひどいよっ……!」



込み上げてきた想いは止められなくて。


そう声を荒げると、勢いよく席を立って身を翻す。



「あっ、陽菜待って……!」



呼び止める真由ちゃんの声に振り返りもせずに、そのまま学校を飛び出した。





「いってぇ……。……今日はよく人にぶつかる日だな……」



誰かにぶつかったことなんて、気づきもしないで。
< 28 / 392 >

この作品をシェア

pagetop