それはきっと、君に恋をする奇跡。
「えっ……」
はらり。
今度こそ、原稿用紙はゆっくり床に舞い落ちた。
これを書いたのは、蒼?
骨折を理由にひとりだけ出していなかった原稿。
3日の猶予をもらって今日先生に提出したとなれば、蒼の原稿がここにあるのも理屈が通る。
でも……右手で書いたんでしょ?
右手で書く文字は、こんな字じゃなかったじゃんっ……。
誰かに代筆を頼んだ?
……この字がハルくんの文字なら……。
ハルくんに代筆を……?
いや、ハルくんは大阪にいて……
そもそも蒼がハルくんに代筆とか……一体どうなったらそうなるのかなんて説明もつかない。
だけど。
実際これが蒼の原稿なのは確かで……。
もう……なにがなんだかわからない。
ただわかるのは、この文字が絶対にハルくんの字だってことだけ……。