それはきっと、君に恋をする奇跡。
「ったくよー、先生ボケてんじゃねえの?なあ?」
あたしにだけ聞こえるような声で同意を求めてくる蒼の瞳は、いつものようにまぶしくて。
「えっ……う、うん……」
今のあたしはそれに耐えられなさそうで、すぐに視線を外した。
……蒼。
あたしは、なにかを知るのが怖いよ。
入学してから今日まで、ずっと隣にいた蒼。
落ち込むあたしを笑顔にしてくれた蒼。
そんな蒼にも、抱えてるものがあると知って。
今度はあたしが蒼を支えてあげたいと思った。
蒼が誰を想っていても、それは変わらないって。
なのに蒼の大切だった人は、病気の親友で。
そんな彼に嫉妬してた自分がほんっとにイヤになった。
だから、あたしになにが出来るか考えようとしていたのに。
蒼にはまだ、何か秘密があるの……?
それも、あたしがやっと忘れられそうになっていた人。
……ハルくんとの関わりという疑いを持って……。
今日も必死に右手でノートをとる蒼の文字は、相変わらず歪だった。