それはきっと、君に恋をする奇跡。
***
放課後。
「蒼」
帰ろうとしていたところにそう呼びかけると、蒼はいつものように優しく明るく、「何?」と答えた。
「話があるの。屋上に来てもらってもいい……?」
どんな内容になるか分からない。
教室で話してうっかり冷静さを失っても困るから、あえて屋上を選んだ。
「えっ……」
戸惑う蒼。
「大丈夫だよ。告白なんてしないから」
自虐なセリフを明るく言うと、蒼は小さく笑って頷いた。
原稿用紙をひっそり隠し持ち、蒼と連れ立って屋上へ向かう。
「寒いね……」
夕方の屋上は、思ったよりも寒かった。
周りに高い建物がないせいか、風が強く吹き抜けている。
「だな。でも気持ちいい」
伸びをしながらあたしの先を行く蒼は、フェンスまでたどり着くとあたしを振り返った。