それはきっと、君に恋をする奇跡。
「あのね……これなんだけど」
カサカサ……と、風によって音を立てる原稿用紙を蒼の前にそっと差しだせば。
「なに?」
四つ折りにされたそれを手にする蒼は、特に警戒もせずに広げて……
「……っ」
目を見張った。
そのあとすぐに、険しい視線があたしに移されて。
「陽菜、これ……」
そう言ったきり、ジッとあたしの目を見つめる。
まるで、あたしの心の中を読もうとしているみたいに。
「ごめんね蒼、勝手に持ち出して」
「……」
「昨日職員室でたまたまこれを目にして……どうしても、聞きたいことが……あっ、」
ビリッ……!
言い終らないうちに、突然蒼がそれを奪った。
はずみで原稿用紙の端が少し破ける。
「……なんだ、陽菜が持ってたんだ。良かった……俺、これ今から提出してくる」