それはきっと、君に恋をする奇跡。
でも、どうやって大阪にいるハルくんが?
あたしには説明できない。
物理的に考えたらそれは不可能すぎて……。
分からないことだらけでもう自制心なんてきかなかった。
「お願いっ……教えてよっ……!!」
蒼を引っ張って、蒼の胸に頭をつけて、その胸を叩く。
「お願いだからっ……!!」
冷たい風に冷やされていく、手、頬、耳。
もう寒さなんて感じない。
ただ、神経を耳だけに集中させる。
時計の秒針が何周したんだろう。
それくらい長い沈黙の後だった。
「…………もう……いいよな……」
蒼は誰かに許しを乞うようにつぶやいて。
「…………そうだな……
……これは……遥輝の字だよな……」
そんな言葉が、冷たい鼓膜を震わせた。
「……っ」
瞬間、頭の中が真っ白になる。
"遥輝の字"
そう言った蒼に。
それって……ハルくんのこと!?
パッ、と。
しがみついていた蒼から手を離す。
だって……あまりに親しげ呼ぶから……。