それはきっと、君に恋をする奇跡。
ある日、クラスの武田(タケダ)ってやつの財布が紛失した。
机の横に掛けた手提げ袋に財布を入れたまま帰ってしまい、翌日財布だけなくなっていたというのだ。
学校へ財布なんて持ってきていた武田が悪いが、なくなったのは事実。
すぐに「誰が盗ったんだ!」なんて騒ぎになり、犯人探しが始まった。
「もしかして蒼じゃねーの?蒼って、学校来るのいっつも一番のりじゃん」
確かに俺は毎朝早く学校へ来ている。
それを知っているソイツはノリで言ったようだが、
「そういえば、水瀬くんって今月給食費忘れてたよね」
思い出したように誰かがそう付け足せば。
「私のお母さんが言ってた。水瀬くんの家はお父さんがいないから、給食費を用意するのも大変なんだろうって」
別のヤツが更に補足して。
「えー、水瀬くんってお父さんいないのー?」
「それなら金に困るよな!」
「マジ?蒼が盗ったの?」
「状況からして一番疑わしいな」
あっという間に容疑者にされた。