それはきっと、君に恋をする奇跡。


……なんだよ、それ。



俺の父さんは、俺が生まれてすぐに亡くなってしまった。


母さんは、俺に不自由な想いをさせない様に必死で働いてくれている。


給食費だって、何日も前から封筒に入れて用意されていた。


俺が持っていくのを忘れただけだ。



「勝手なことばっか言って、ふざけんなよっ……!」



俺は頭にきて、最初に疑ったヤツの胸倉をつかんだ。



「きゃあああーーっ!」



女子は悲鳴をあげ、



「水瀬くんって、ちょっと怖いと思ってたんだぁ……」


「お父さんがいないからちゃんとしてないんだよ」


「えー、あたしは可哀想だと思うなぁ」



俺の家庭環境に触れ、哀れむ奴もいれば、だから野蛮なんだよ……なんて話が違う方向に進んでく。




……なんなんだよっ……。


父さんがいないことがそんなに罪か?


可哀想な扱いをされるものまっぴらだが、罪人扱いなんてもっと冗談じゃねえ。
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