それはきっと、君に恋をする奇跡。
その後も、遥輝の膝の痛みは治まらず───
夏に突然倒れ救急搬送された。
それは部活中で、気温も高かったことから熱中症が疑われた。
「うわっ、パジャマ姿似合わねーの!」
病院に飛んで行くと、遥輝は意外にも元気でそう茶化した。
不安でしかなかった自分を落ち着かせる為に、そんな言葉を放ったんだ。
「明日には退院できるから来なくてよかったのに」
遥輝も笑って返す。
「遥輝の緊急事態に飛んでこないわけねえだろ」
「なんだよそれ、彼女みたいだな」
「ああ、俺遥輝大好きだし。陽菜に嫉妬するわ!」
日頃遥輝の口から"陽菜"の名前が出てくるから、俺も陽菜と呼んでいて、会ったこともないのに勝手に知り合いのような感覚だった。
「キモッ!やめろってー」
病室で俺たちはそんな冗談を言い合うほど余裕があって。
このときの俺は。
遥輝の体が病魔に侵されてるなんて、まったく気づかなかったんだ……。