それはきっと、君に恋をする奇跡。


切断……?

転移……?

生存率……?



「……っ」



本を持つ手が震えた。

それ以上読み進める勇気がなく、パタンと本を閉じる。



ウソだろ。

遥輝がこんな病気になるなんて。



でも、これは悪性だった場合の話だろ?

遥輝に限って大丈夫だ。

良性に決まってる。

手術して、すぐに元気になる。

そう強く信じることで、俺は自分を保った。





……そんな願いも虚しく、遥輝の腫瘍は悪性だった。


本人に聞く勇気がなくて、遥輝の両親に頼み込んで本当のことを教えてもらった。


すぐに切断云々の話になるわけじゃなく、今は手術をするための化学療法…つまり抗がん剤治療が始まっているらしい。


腫瘍を小さくすることで、確実に腫瘍を取り除くことがねらいのようだ。


すぐにでも遥輝の元へ行きたかったが、副作用がつらくしばらくはお見舞いは控えて欲しいと家族に言われ、我慢した。
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