それはきっと、君に恋をする奇跡。
それを拾い上げると、目が勝手に文字を追って、悪いと思いながらも中身を読んでしまった。
『この間の大会ではホームラン打ったんだよ』
なんだ、これ?
どうやら書きかけの手紙らしい。
その便箋と一緒に、陽菜からの手紙もあった。
きっと返事を書いているんだろうけど。
「ホームランて……」
気には、なっていた。
陽菜にはなんて告げたんだろうと。
でも、その文面を見て気づいてしまった。
病気のことを隠して、手紙上では元気な遥輝を演じてんだ……。
「……っ……」
どんな想いでこの手紙を書いてんだよ……。
遥輝の気持ちを考えたら、胸が張り裂けそうになる。
でも、大丈夫だよな。
遥輝は絶対に手術がうまく行って、元気になって、野球も出来るようになる。
全て元通りになる。
この手紙の通りになる。
その為に俺は遥輝を全力で支えよう。
ここに書いてある嘘が、嘘じゃなくなるように……。