それはきっと、君に恋をする奇跡。


つらい抗がん剤治療を頑張ったおかげで、腫瘍は少し小さくなり、年明け腫瘍を取り除く手術が行われた。


手術は無事成功し、人工膝関節置換術というものが行われた。

切除した骨の代わりに、金属製の人工関節を埋め込むのだ。

数ヶ月は車いす生活となり、その後も長いリハビリが待っている。


まだまだ先は長いが、遥輝は前向きだった。


だが退院して1ヶ月後の検査で、右上腕部に転移が認められた。



……また、振り出しだ。



予後を考え、今回は切断も選択肢に入ったが遥輝は首を縦に振らなかった。


"野球をやりたい"


そのためには、右腕が必要なんだと。


再入院となり、ツラい化学療法が再びスタートし、副作用に苦しむ遥輝……。


それでも。


遥輝も、家族も。


弱音を吐いたり諦めたりすることはなかった。


今回は遥輝の家族に頼み込んで、俺も出来るだけ遥輝の側に居させてもらった。


無菌室にも入り、苦しむ遥輝の背中をさすって、少しでも不安から解放されるようにと手を握り。


遥輝の体から、ガンが消えることだけを願って……。
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