それはきっと、君に恋をする奇跡。


そうだよ。

全部吐き出せよ。


すべて受け止めてやるから。


俺にだけは遥輝の心ん中、全部みせてくれよ。


俺は遥輝の体を抱きしめながら背中を優しくさする。



「はあっ……はあっ……」



でも、今の遥輝にはその体力すら十分に残っておらずすぐに息が切れた。


力が弱まっていくその体をしっかり抱えて俺に寄りかからせる。



「うっ……」



嗚咽をこらえようとする遥輝に俺は言った。



「我慢すんな。俺も泣くから……!一緒に泣こうっ……!」



遥輝が笑ってるから、俺も笑わなきゃって思った。


俺が下を向くわけにいかないって。


でも、そればかりが正しいんじゃない。



周りのために、遥輝は泣かないんだ……


泣ける場所だって、必要なんだ……




「うあああああっ…………っっっ!!」



遥輝は、繋いでいた糸が途切れたかのように声をあげて泣いた。



悔しさ。
怒り。
悲しみ。
苦しさ。



俺の前では我慢すんな。

ツラいときは感情のままに泣けよ……。


そして……病気が治ったら、あとで一緒にいっぱい笑おう。


それでいいんだ……。




その日、遥輝と俺は思いっきり泣いた。
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