それはきっと、君に恋をする奇跡。


もともと、字体は割と似ていた俺達。

他人が書いたという先入観なんてなければ、人間の目なんて不思議で、遥輝が書いたものだと思えばそう見えるに決まってる。


俺は必死で練習して、"遥輝の筆跡"を習得した。




「どうだ、完璧に真似出来てるだろ!」



俺が書いた文字を見て遥輝は驚いていた。



「すげえ、ほんとに俺の字だな」



よく見ると粗もあるが、手紙をわざわざ見比べたりしないだろう。

別の誰かの筆跡に変わったなんて、まず疑いやしない。



「俺くらいになると、こんなの余裕なの」


「出た。蒼の"俺くらい"」



遥輝は笑った。



それから俺は、手紙の代筆を続けた。


文章を遥輝が口にし、それを俺が文字にする。


嘘の内容に、胸の痛みを覚えながら……。

< 328 / 392 >

この作品をシェア

pagetop