それはきっと、君に恋をする奇跡。
もともと、字体は割と似ていた俺達。
他人が書いたという先入観なんてなければ、人間の目なんて不思議で、遥輝が書いたものだと思えばそう見えるに決まってる。
俺は必死で練習して、"遥輝の筆跡"を習得した。
「どうだ、完璧に真似出来てるだろ!」
俺が書いた文字を見て遥輝は驚いていた。
「すげえ、ほんとに俺の字だな」
よく見ると粗もあるが、手紙をわざわざ見比べたりしないだろう。
別の誰かの筆跡に変わったなんて、まず疑いやしない。
「俺くらいになると、こんなの余裕なの」
「出た。蒼の"俺くらい"」
遥輝は笑った。
それから俺は、手紙の代筆を続けた。
文章を遥輝が口にし、それを俺が文字にする。
嘘の内容に、胸の痛みを覚えながら……。