それはきっと、君に恋をする奇跡。


あっという間に、夏が過ぎ。

夏休みが明けても、俺はなかなか学校へ行く気にはなれなかった。


長く休んでいたせいなのか、何かをする気力を俺から奪っていた。



骨肉腫という病気を調べたときに、肺に転移するのはとても怖いという知識を入れていた。

今回の肺転移は、精神的ダメージが大きすぎる。



『どうしてあの子ばっかり……』


いつも気丈に振る舞っていた遥輝の母親の涙をはじめて見た。



苦しい治療、手術。

何度も遥輝は耐えてきたのに。

これ以上遥輝を苦しめるのかよっ……。


遥輝がなにかしたっていうのかよっ……!

こんなにイイ奴がどうしてこんなに苦しまなきゃなんないんだっ……。




手術で腫瘍は摘出されたが、抗がん剤治療は続き、退院の見通しは立たなかった。
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