それはきっと、君に恋をする奇跡。
……これが現実なのか?
遥輝が元気すぎるから、この病気の恐ろしさを忘れかけていた。
だけど病魔は一秒も待ってはくれずに体を蝕み続けてんだ。
はじめて死というものを意識したのは、この日だったかもしれない。
遥輝は、そういう危険と隣あっているということを。
遥輝がいなくなる。
そんな世界、絶対に考えらんねえ。
俺はお前と……一緒に大人になりてえよ……。
頼む、遥輝。
死なないでくれよ。
翌日には容体は安定した。
数日後、面会が許され死にそうな想いをしながら開けた扉の向こうには。
ベッドの上で微笑む遥輝の姿があった。
白く無機質な空間。
鼻につくのは、嗅ぎ慣れた薬品のにおい。
ここは異質な空間で、早くここから遥輝を出してあげたいと思っていたのに。
またここに戻れたことが、どうしてこんなにも嬉しいんだろう。