それはきっと、君に恋をする奇跡。






陽は傾き、細く伸びたオレンジ色の光が窓から入り込む。



「お願いが……あるんだ」



掠れた遥輝の声が、静かに落ちた。



「……なに?」



それに答える俺の声も同じように掠れていた。



「桜園高校に、入ってくれないか……」




『二度とそんなこと口にするな』



あのときぶつけた言葉に、俺は後悔を覚えていた。


二度と口に出来なくなることの方が、怖いんだ。


むしろ、また口にしてもらえたことに喜びを覚えるくらい。



だから……俺の答えなんて決まってる……。




「……わかった」



こう言うしか、ないんだ。




「……ごめん……こんなこと頼んで」



遥輝は申し訳なさそうにうつむく。



「ううん」



そんな顔をしないでほしい。

遥輝のためならなんだってする。


そう決めたんだ。



『俺は、水瀬くんを信用してる』



あのとき、たったひとりで俺を救ってくれた遥輝に、俺の出来るすべてを捧げるって決めたんだ。


強く首を横に振ると、遥輝は穏やかな目をみせたあと真っ直ぐに顔をあげた。
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