それはきっと、君に恋をする奇跡。
「そんなっ……おばさんはそれでいいんですかっ!?」
「今までずっとツラい治療に耐えてきたんだものっ……。最後くらい、もう遥輝を自由にしてあげたいわっ……ううっ……」
泣き崩れるおばさんと菜々さん。
遥輝と遥輝の家族が下した決断に、俺が口を挟めるわけもなかった……。
はじめから足を切断していれば命は助かったかもしれない。
腕に転移した時、今度こそ切断していれば良かったのかもしれない。
腕を残して野球どころか……
命を落とすことになるなんて……。
なんでっ……。
なんでっ……。
俺はただ、放心して涙の一つも出なかった。
そんな中、マロが遥輝の姿を探すように、か細く喉を鳴らしていた……。